肥満に対するGLP-1療法について
GLP-1は糖尿病に対する薬剤です。全身の細胞でGLP-1受容体のある細胞なら効果を発揮するので心不全や認知症にも期待されています。糖尿病患者さんの場合、よく血糖が下がる人たちは膵β細胞からのインスリン分泌が回復したというより血糖を上げるホルモンのグルカゴンが低下したという理由のほうが妥当と考えらます。また、中枢に作用して吐き気のようなメカニズムで食事量や食事回数が減って血糖が下がったと解釈するほうが妥当と考えます。
肥満に対してGLP-1を用いるのは、厚生労働省は慎むように勧告しています。効果も限定的です。食欲を抑えるだけなら適正な運動療法もうまくいきますし、安易にGLP1に頼るのはやはり未知の作用を心配してしまいます。GLP1レセプタ-はGPCRタイプで細胞膜を7回貫通するタイプです。そのタイプで有名なものはアドレナリンです。高濃度に刺激するとレセプタ-が細胞の中に引き込まれてしまうダウンレギュレ-ションが起き易いタイプです。制御を受けやすいタイプなので、病的にGLP1シグナルが落ちていない人に安易に用いるのは非科学的です。投与法を工夫すれば、使えるであろうと主張反論される医者がおられるなら2000~3000種類はあると言われているGPCRのすべての性質を理解されているなら少しは心情的に賛成してしまいそうな気分になりますがやはり科学としてはいかがなものかなと考えます。