腎血流について
腎血流量を規定する因子は複数あります。以下に主な因子を挙げます:
腎動脈の抵抗: 腎動脈の収縮や拡張が腎血流量に影響を与えます。交感神経の活動やホルモン(例:アンジオテンシンⅡ)の作用により、腎動脈が収縮すると血流量が減少します2。
糸球体内圧: 糸球体内の毛細血管の圧力も重要です。輸入細動脈と輸出細動脈の収縮・拡張のバランスが糸球体内圧を決定し、これが腎血流量に影響を与えます2。
ホルモンの影響: レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAAS)や抗利尿ホルモン(ADH)などのホルモンが腎血流量を調節します。これらのホルモンは血圧や血液量を調整し、腎血流量に影響を与えます3。
血液の粘度: 血液の粘度が高いと血流が遅くなり、腎血流量が減少します。逆に、血液の粘度が低いと血流が速くなり、腎血流量が増加します2。
これらの因子が相互に作用し合い、腎血流量を調整しています。
腎血流量の制御は、腎臓の機能を維持し、体内の水分や塩分のバランスを保つために重要です。以下のようなメカニズムで制御されています:
自己調節機能: 腎臓は自己調節機能を持っており、腎動脈圧が一定範囲内にあると、動脈圧の変動にかかわらず腎血流量を一定に保つことができます1。
神経的制御: 自律神経系が腎血流量を調節します。交感神経が活性化すると、腎動脈が収縮し、血流量が減少します。逆に、副交感神経が活性化すると、腎動脈が拡張し、血流量が増加します2。
ホルモンの作用: レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAAS)が腎血流量の調節に関与しています。血圧が低下すると、腎臓からレニンが分泌され、アンジオテンシンⅡが生成されて血管が収縮し、血圧が上昇します12。
食事や生活習慣の影響: 塩分の摂取量や水分摂取量も腎血流量に影響を与えます。塩分の摂取が多いと血圧が上昇し、腎臓への負担が増えます3。
これらのメカニズムが協力して、腎血流量を適切に調節し、腎臓の機能を維持しています。
腎臓の血流には2つの特徴がある。
臓器100gあたりの血流量を比較すると、腎臓が最も多く、安静時の概略値(mL/分/100g)は腎臓420、心臓80、肝臓60、脳54である。片方の腎臓の重量は約100gなので両方の腎臓で血流量は約1,000mL/分となり、腎血流量は心拍出量の約1/5に相当する。
一般に毛細血管の動脈側の血圧は約35mmHg(静脈側で約15mmHg)であるが、腎臓の毛細血管(糸球体)では例外的に約60mmHgと高い。
スターリングの仮説 Starling hypothesis によると、毛細血管では血圧による血管外への水の移動と膠質浸透圧 colloid osmotic pressure による血管内への水の移動が存在する。糸球体では、膠質浸透圧の約25mmHgに加えてボウマン嚢圧の約15mmHgが濾過の抵抗として働く。その抵抗に逆らって血漿を濾過して尿をつくるために糸球体の血圧は他の毛細血管の血圧よりも高くなければならないのである。
このような血流の特徴から腎臓は、血圧低下の検知器として働く。血圧が低下すると腎臓は尿をつくれなくなるので、腎臓の傍糸球体細胞 juxtaglomerular cell (JG細胞)に血圧低下を検知し、血圧を上昇させるシステムがある。それがレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系 renin - angiotensin - aldosterone system (RAAS)である。