集合管について(パクリタキセルの理解のために)
パクリタキセルは、細胞内の微小管という構造を阻害します。
微小管は細胞内の骨格を形成し、細胞分裂や運動に重要な役割を果たしています。
パクリタキセルは、微小管の安定性を高め、細胞内の正確な分裂を妨げることで、がん細胞の増殖を抑制します。
微小管の役割:
- 細胞分裂において、染色体の正確な分配が必要です。
- 微小管は、細胞分裂の際に紡錘体と呼ばれる構造を形成し、染色体を適切に配置します。
微小管の重合と脱重合:
- 細胞分裂の中期まで、微小管は束になって重合しています。
- 分裂の後半になると、微小管は解離してばらばらになる(脱重合)必要があります。
パクリタキセルの作用:
- パクリタキセルは、微小管の脱重合を阻害します。
- これにより、微小管が束になった状態を維持し、細胞分裂を停止させます。
抗腫瘍効果:
- 細胞分裂を阻害することで、がん細胞の増殖を抑えます。
- がん細胞は無秩序に増殖し、正常な細胞を障害し、組織を壊すことで、本来がんのかたまりがない組織でも増殖します。
総括すると、パクリタキセルは微小管の重合を促進し、微小管の安定化・過剰形成を引き起こすことで、細胞分裂を阻害して抗腫瘍効果を発揮します
細胞内の骨格である微小管の伸び縮みを制御する仕組みが解明されています。微小管は細胞分裂や運動に重要な役割を果たしており、その重合と脱重合は細胞内の正確な機能に影響を与えます
特に、KIF2というモータータンパク質が微小管の脱重合に関与しています。以下のメカニズムで微小管の伸び縮みを制御しています:
神経細胞の突起伸長:
- 神経細胞の突起が伸長する刺激(BDNF刺激)下では、キナーゼ(PAK1やCDK5)がKIF2の特定の部位をリン酸化し、KIF2の微小管の脱重合活性を抑えて神経細胞の突起伸長を促します。
突起伸長の開始抑制:
- 突起伸長を抑える刺激(LPA刺激)下では、キナーゼ(ROCK)がKIF2の別の部位をリン酸化し、微小管の脱重合活性を促し、突起の伸長を抑えます。
この仕組みにより、神経細胞は外界の刺激に応じて微小管の伸び縮みを自在に制御して適応できるようにしています