膵臓癌について
膵臓は、胃の後ろにある、長さ20cmほどの細長い形をした臓器で、体の右側のふくらんだあたりを膵頭部といい、十二指腸に接しています。体の左側の幅が狭くなっているあたりは膵尾部といい、すぐ近くに脾臓があります。膵臓の真ん中は体部といいます。膵臓全体には、膵管という管が通っています。
膵臓がんは、多くは膵管に発生し、そのほとんどは腺がんという組織型(顕微鏡で見える画像による分類)です。膵臓がんは小さいうちから膵臓の周りのリンパ節や肝臓に転移しやすく、おなかの中にがん細胞が散らばって広がる腹膜播種が起こります。
ほかに膵管にできる病気として、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN:Intraductal Papillary Mucinous Neoplasm)があり、ここから膵臓がんが発生したり、別の部位に膵臓がんが発生したりすることがあります。
その他、膵臓にできる腫瘍には、神経内分泌腫瘍などがありますが、通常の膵臓がん(腺がん)とは性質が異なり、非常にまれです。
膵臓は、がんが発生しても小さいうちは症状が出にくく、早期の発見は簡単ではありません。
進行してくると、腹痛、食欲不振、腹部膨満感(おなかが張る感じ)、黄疸、腰や背中の痛みなどが起こります。
その他、急に糖尿病が発症することや悪化することがあり、膵臓がんが見つかるきっかけになることもあります。
膵臓がんの治療には、手術、薬物療法、放射線治療、緩和ケアがあります。
がんが切除できる場合は、手術のみ、もしくは手術と薬物療法、放射線治療を組み合わせた治療(集学的治療)を行います。
切除できない場合は、主に薬物療法や薬物療法と放射線治療を組み合わせた治療を行います。
がんの進行の状態によっては、緩和ケアのみを行う場合も多くあります。
膵頭部を中心にがんがある場合、十二指腸、胆管、胆のうを含めて膵頭部を切除します。がんが胃の近くにある場合は胃の一部を、がんが血管を巻き込んでいる疑いがある場合は血管の一部も切除します。
これまでは、胃の2/3の切除を伴う膵頭十二指腸切除術(PD)が広く行われていました。
最近では、できるだけ切除する範囲を少なくする、胃のすべてを残す幽門輪温存膵頭十二指腸切除術(PPPD)や胃の大部分を残す亜全胃温存膵頭十二指腸切除術(SSPPD)に変わりつつあります。
切除後は、残った膵臓を小腸につなぎ合わせ、膵液が小腸に流れるようにします(再建手術)。同様に、胆管と小腸、胃と小腸もつなぎ合わせます。
化学放射線療法
放射線治療と化学療法(細胞障害性抗がん薬による治療)を組み合わせた治療法です。遠隔転移はないと判断されるものの、がんが膵臓近くの重要な血管を巻き込んでいることが明らかで、手術ができない局所進行切除不能膵臓がんの場合に行われます。
化学療法と組み合わせることで治療の効果を高めることが期待でき、局所進行切除不能膵臓がんに対する標準治療の1つとして勧められています。なお、粒子線治療(重粒子線治療、陽子線治療)が受けられる場合がありますが、実施される施設は限られています。
薬物療法
膵臓がんの薬物療法では、主に細胞障害性抗がん薬を使います。なお、病状や治療の状況によって、がん遺伝子検査が行われることがあり、その結果によっては、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬を使う場合があります。
細胞障害性抗がん薬は、細胞が増殖する仕組みの一部を邪魔することで、がん細胞を攻撃する薬です。分子標的薬は、がん細胞の増殖に関わるタンパク質などを標的にして、がんを攻撃する薬です。免疫チェックポイント阻害薬は、免疫ががん細胞を攻撃する力を保つ(がん細胞が免疫にブレーキをかけるのを防ぐ)薬です。
薬物療法で使用する薬の組み合わせは複数あります。どの種類の薬を使うかは、治療の目的、がんの状態や臓器の機能、薬物療法に伴って起こることが想定される副作用などについて、本人と担当医が話し合って決めていきます。