強皮症について
全身性強皮症の病因は複雑であり、その病態は十分には解明されていない。しかし、これまでの研究により
①免疫異常、②線維化、③血管障害、これら3つの異常と深い関連性を有することが明らかとなった。
しかし、その相互関係や病因については不明のままである。
硬化の程度、進行などについては患者によって様々である点に注意が必要である。この観点から、全身性強皮症を大きく2つに分ける分類が国際的に広く用いられている。つまり、典型的な症状を示す「びまん皮膚硬化型全身性強皮症」と、比較的軽症型の「限局皮膚硬化型全身性強皮症」に分けられている。
前者は発症より5~6年以内は進行することが多いが、後者の軽症型では進行はほとんどないか、あるいは緩徐である。なお、「限局性強皮症」は皮膚のみに硬化が起こる全く別の病気であり、前述の「限局皮膚硬化型全身性強皮症」とは全く異なるものである。
レイノー症状、皮膚硬化、その他の皮膚症状、肺線維症、強皮症腎クリーゼ、逆流性食道炎などが認められ、手指の屈曲拘縮、肺高血圧症、心外膜炎、不整脈、関節痛、筋炎、偽性イレウス、吸収不良、便秘、下痢、右心不全などが起こることがある。
全身性強皮症では抗セントロメア抗体、抗トポイソメラーゼI(Scl-70)抗体、抗U1RNP抗体、抗RNAポリメラーゼ抗体などが検出される。前述した「びまん皮膚硬化型全身性強皮症」では抗トポイソメラーゼI(Scl-70)抗体や抗RNAポリメラーゼ抗体が検出され、
一方「限局皮膚硬化型全身性強皮症」では抗セントロメア抗体が陽性となる。
<診断基準>
全身性強皮症・診断基準 2010年
大基準
手指あるいは足趾を越える皮膚硬化*
小基準
1)手指あるいは足趾に限局する皮膚硬化
2)手指尖端の陥凹性瘢痕、あるいは指腹の萎縮**
3)両側性肺基底部の線維症
4)抗Scl-70 (トポイソメラーゼI)抗体、抗セントロメア抗体、抗RNAポリメラーゼIII抗体陽性
診断のカテゴリー
大基準、あるいは小基準1)かつ2)~4)の1項目以上を満たせば全身性強皮症と診断
診断基準及び重症度分類の適応における留意事項
1.病名診断に用いる臨床症状、検査所見等に関して、診断基準上に特段の規定がない場合には、いずれの時期のものを用いても差し支えない(ただし、当該疾病の経過を示す臨床症状等であって、確認可能なものに限る。)。
2.治療開始後における重症度分類については、適切な医学的管理の下で治療が行われている状態であって、直近6か月間で最も悪い状態を医師が判断することとする。
3.なお、症状の程度が上記の重症度分類等で一定以上に該当しない者であるが、高額な医療を継続することが必要なものについては、医療費助成の対象とする。