脊椎関節炎について
脊椎関節炎は、脊椎や腕、脚などの関節に炎症がみられる病気の総称で、以前は血清反応陰性脊椎関節症(炎)と呼ばれていました。40歳以下の若年で発症することが多く、
背中や腰の痛みが中心となる“体軸性脊椎関節炎たいじくせいせきついかんせつえん”と、主に手や足の関節に症状が現れる“末梢性脊椎関節炎まっしょうせいせきついかんせつえん”に大きく分類されています。
関節の症状のほかに、目の炎症、炎症性腸疾患、皮膚病変などを合併することがしばしばあります。
脊椎関節炎には、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎かんせんせいかんせつえん、反応性関節炎、炎症性腸疾患関連関節炎、ぶどう膜炎関連関節炎、その他の分類不能脊椎関節炎などが含まれます。
原型となるのは強直性脊椎炎で、頻度として多くみられるのは乾癬性関節炎です。遺伝的要因としてHLA-B27遺伝子との関連性が高いことが知られていますが、発症には環境要因も関係していると考えられています。
脊椎関節炎は比較的若い年齢で発症することが多く、10歳代で症状が出ることもあります。45歳以降での発症はまれです。日本における男女比は約3~5:1といわれており、男性に多い病気です。HLA-B27の保有頻度から、欧米と比べて日本ではまれと考えられています。近年この病気が以前より広く知られるようになり、適切に診断・治療される例が増えてきています。
脊椎関節炎は、免疫に関わる重要な分子である組織適合性抗原(白血球の血液型として発見されたヒト白血球抗原)のHLA-B27との関連が強く、なかでも強直性脊椎炎では多くの患者がこの遺伝子を持っていることが知られています。また、遺伝子のほかに環境の影響もあることが指摘されています。
一方で、全ての患者がHLA-B27遺伝子を持っているわけではなく、環境因子についても具体的には明らかにされていません。乾癬性関節炎は肥満や脂質異常症、糖尿病などの影響を受けたメタボリックシンドロームの1つと考えられています。
脊椎関節炎は、ほかの病気に関連して起こる場合もあります。たとえば、炎症性腸炎関連関節炎は潰瘍性大腸炎かいようせいだいちょうえんやクローン病といった腸炎、乾癬性関節炎は皮膚の病気である乾癬に関連して起こることが知られています。また、反応性関節炎のように、消化管や泌尿生殖器の感染症がきっかけの1つとなって脊椎関節炎を発症することもあります。
症状
脊椎関節炎全体に共通する症状には、関節に出る症状と、そのほかの症状があります。また、脊椎関節炎は症状の特徴の違いから、“体軸性脊椎関節炎”と“末梢性脊椎関節炎”の2つに大きく分類されています。
関節の症状
関節に炎症が起こると、痛みやこわばりが現れます。背中や腰の痛みは運動すると改善し、安静にすると悪化して、特に夜間後半から早朝にかけて症状が強くなりやすいという特徴があります。足や手の関節炎、アキレス腱や足底など靱帯が骨につく部分の痛む“付着部炎”、手や足の指がソーセージのように腫れる“指趾炎”なども共通してみられる症状です。関節リウマチと比べて一度に症状の出る関節の数が少なく、股関節こかんせつや肩関節、膝など大きな関節に症状が出やすいことや下肢に症状が出やすいことも特徴です。
関節以外の症状
脊椎関節炎では、しばしば合併症が見られます。多く見られるものには、結膜炎やぶどう膜炎などの目の症状、クローン病や潰瘍性大腸炎など腸の症状、乾癬や爪の病変など皮膚の症状があります。乾癬とは、円形に赤みがかった皮膚が少し盛り上がり、その表面が銀白色にカサカサと剥がれるような症状を示すものです。脊椎関節炎の種類によって、現れやすい合併症には違いがあります。
体軸性脊椎関節炎と末梢性脊椎関節炎
近年、脊椎関節炎の中で“体軸性脊椎関節炎”と“末梢性脊椎関節炎”を分類するための基準が提唱されました。
体軸性脊椎関節炎
体軸性脊椎関節炎では、腰や背中の痛みが症状の中心となります。45歳未満で3か月以上続く背部痛があることが前提となり、さらに仙腸関節(腰にある骨盤の仙骨と腸骨の間の関節)の炎症(画像所見)やHLA-B27遺伝子を有すること、脊椎関節炎に共通するそのほかの症状が見られることなどによって分類されます。
末梢性脊椎関節炎
末梢性脊椎関節炎では、関節炎や腱の付着部炎、指趾炎など手足の症状が中心となって現れます。これらの症状のほかに、ぶどう膜炎や乾癬、腸炎、感染症などの特徴的な症状や、LA-B27遺伝子、画像所見などと合わせて分類されます。
症状に合わせてこれらの分類基準を用いることで、従来よりも早期に診断ができるようになりました。ただし、基準を満たしただけでは判断できず、似た症状を示すほかの病気の可能性を除く必要があるため、専門家による診断が必要となります。
検査・診断
脊椎関節炎は臨床症状の確認と問診、画像所見、血液検査などから診断されます。診断のためには、似たような症状を示す病気を除外することが大切です。また、多彩な症状を示すことがあるため、膠原病こうげんびょう・リウマチ内科や皮膚科など、複数の診療科の協力が必要な場合があります。
近年はMRI検査の有用性が確認され、以前よりも早期の診断が行いやすくなりました。
2024年4月6日 | カテゴリー:新着情報, 関節リウマチ リウマチ外来, 膠原病 |