血圧はいつの値が信頼できるかについて
血圧は夜間から早朝にかけて上昇する.ある程度の上昇は生理的現象であるが,それが過度となった「血圧モーニングサージ」は循環器疾患のトリガーとなる.
また,1日1回朝投与の降圧薬の薬効が最も切れ循環器疾患の発症とリスク因子やすい早朝血圧は,現在の降圧治療の盲点となっている.従って,降圧治療の最初の第一歩は,家庭血圧で評価できる早朝高血圧をターゲットにした降圧療法が最も実践的且つ効率的である.
しかし,早朝高血圧のコントロールだけではではない.次に潜む残余リスクは夜間睡眠中と職場にある.つまり,夜間高血圧と昼間(ストレス)高血圧である(図 4).昼間高血圧は働き盛りのストレス下にある青壮年に多く,夜間高血圧は高齢者や糖尿病,慢性腎臓病や睡眠時無呼吸等の疾患を有する患者に多い4).これら仮面高血圧の表現型のいは,個人の置かれている生活習慣やストレス,昇圧特性により決定され,これらの血圧を変動させるトリガーの時が重なった場合にさらに大きく増幅し,心血管イベントにつながる病的なサージ血圧を生み出す(血圧サージ共振仮説).
最 近 のABPMを 用 い た 予 後 追 跡 研 究 で あ るJAMP 研究(Japan Ambulatory Blood PressureProspective Study)では,昼間血圧に比較して夜間血圧が,より強い循環器疾患のリスク因子であることが示されている.また,夜間血圧が測定できる家庭血圧計を用いた予後追跡研究であ るJ-HOP(Japan Morning Surge-Home BloodPressure)研究では,夜間高血圧が診察室血圧や早朝家庭血圧とは独立して脳卒中リスクとなっている5).