骨髄腫(ALアミロイド-シスに対する治療について)
臓器に沈着したアミロイドの除去を促す治療はまだ臨床応用されておらず、ALアミロイド-シスに対する治療の基本はアミロイドの元となるフリ-ライトチェイン(FLC)低下させることが主目的となる。
米国の(NCCN)ガイドラインでは、自家末梢血幹細胞移植併用メルファラン療法(HDM/ASCT)の適応症例と非抵抗症例のいずれにたいして、も推奨レジメンとしてシクロホスファミド(CPA)、ボルテゾミブ(BOR)デキサメタゾン(DEX)の組み合わせが記載されており、英国のガイドラインでも推奨されている。
しかし、BORは多発性骨髄腫に合併しない原発性ALアミロイド-シスに対しては保険適応となっていないことに注意が必要である。
また、英国のALアミロイド-シスのガイドラインでは多発性骨髄腫に用いた場合よりも、治療関連毒性が高くなることから減量を推奨している。残念ながらBORを含む治療の有効性および安全性を支持するランダム比較試験は存在しない。
我が国の保険適用も鑑みると、現在もっとも一般的な治療はメルファランとデキサメタゾンの併用療法ではHDM/ASCTを行うことにより高い奏効および長期生存が得られる可能性がある。
ALアミロイド-シスの治療としてのHDM/ASCTが他の治療法と比較して有効性に優るというエビデンスは残念ながら存在しない。
2007年にNEngl J Med に報告されたMEL/DEXとHDM/ASCTの比較試験ではHDM/ASCTの優位性は示されなかったが、本試験に登録された症例では心病変のバイオマ-カーによる重症度の評価がなされておらず、このことが24%というHDM/ASCT高い高いtreatment related mortality(TRM)つながった可能性がある。
HDM/ASCTの適応についてはMayo Clinicの基準およびUK amyloidosis treatment trial の基準が参考となるMayo Clinicからの 最近のレビユーではよりシンプルな適格基準が紹介されている。
MEL/DEXは治療強度が弱く有効性が乏しい印象を受けやすいが、治療関連毒性も低いことからHDM/ASCTの適応とならない症例に対しては推奨される。イタリアのPalladiniらのグル-プから血液学的奏効(M蛋白の減少)が得られる症例では良好な生存率が期待出来ることが報告されている。
欧米から有用性が報告されているBORやthalidomidehaは、2020年3月現在で多発性骨髄腫合併のアミロイドには保険適応で利用可能であるが、原発性アミロイド-シスに対しては保険適応がない。
CPA,BOR,DEXの組み合わせがMayo ClinicのグループからCyBorDとして、ロンドンのNational Amyloidosis Center からは、CVD療法として、有効性と安全性が報告されていることから、適格性を新調に判断すれば有力な治療選択肢となる可能性がある。
CTD(CPA,THAL,DEX)療法は従来から英国において標準治療であったが、Vennerらはmatche pair analysisの結果を報告し、CVD療法によりCTD療法よりも高い奏効がえられる可能性を示している。
我が国でもBORやTHALの原発性ALアミロイド-シスにたいする早期の保険収載が待たれている。ALアミロイド-シスにたいする自家移植の適格基準<Mayo Clinic>必要条件 生理的年齢<70歳 CCr>30ml/min 心筋トロポニンT<0.06ng/ml 収縮期血圧≧90mmHg NYHA Class I/II NYHA:New York Heart Assocition