副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)分泌低下症
ACTH分泌低下症の診断と治療の手引き(H22年度改定)診断の手引き #1主症状1)全身倦怠感2)易疲労性3)食欲不振4)意識障害5)低血圧#2検査所見1)血中コルチゾ-ルの低置2)尿中遊離コルチゾール排泄量の低下3)血中ACTHは高値ではない。(注1)4)ACTH分泌刺激試験 <CRH(注2)、インスリン(注3)負荷など>にたいして、血中ACTHおよびコルチゾ-ルは低反応ないし無反応をしめす(注4)5)迅速ACTH(コ-トロシン)負荷に対して血中コルチゾ-ルは低反応を示す。ただし、ACTH-Z(コ-トロシンZ)連続負荷に対しては増加反応がある。#3除外規定 ACTH分泌を低下させる薬剤を除く。{診断の基準}確実例#1の1項目以上と#2の1)~3)をみたし、4)あるいは、4)および5)をみたす。#4注意点(注1)血中ACTHは25pg/ml以下の低置の場合が多いが、一部の症例では、血中ACTHは正常ないし軽度高値を示す。生物活性の乏しいACTHが分泌されている可能性がある。CRH負荷前後の血中コルチゾ-ルの増加率は、原発性副腎機能低下症を除外できれば、生物活性の乏しいACTHが分泌されている可能性の鑑別の参考になる。(注2)CRH受容体異常によって、血中ACTHの低置と分泌刺激試験での血中ACTHの低反応が認められることがある。(注3)低血糖ストレスによって嘔吐、腹痛、ショック症状を伴う急性副腎機能不全に陥ることがある。(注4)視床下部性ACTH分泌低下症の場合は、CRHの一回投与でACTHは正常から過大反応を示すことがあるが、コルチゾールは低反応をしめす。また、CRH連続投与ではACTHとコルチゾールは正常反応を回復する。<治療の手引き>①治療の基本、副腎皮質ホルモンの補充療法②治療の実際特別な理由がない場合はヒルロコルチゾンまたはほかのグルコ
コルチコイドを経口投与する。投与回数は1日1~2回。1日投与量の2/3を朝に。1/3を夕に投与することが望ましい。投与量は体重、自覚症状、生化学検査所見などを基に決定する。血中ACTH濃度治療効果の指標にはならない。治療に際しては、少量(ヒドロコルチゾンとして、1日5~10mg)から開始し、最初は1~2週間の間隔で経過を観察し、副作用がなければ段階的にぞうりょうして維持量(10~30mg)とする。手術、感染、そのたのストレス時には、維持量の2~3倍を投与する。甲状腺機能低下を合併する場合にはグルココルチコイド治療を開始後に甲状腺ホルモンを投与する。治療を急ぐ場合には、ヒドロコルチゾン、生理食塩水、ブドウ糖を静脈内に投与。(例;ソル、コ-テフ注100mg+生食水2~3L+ブドウ糖50g)③注意点1)感冒による発熱など、日常生活の中でヒドロコルチゾンの投与量を増加する必要が生じる場合に備えて、臨時使用の目的で予備的な処方をして、使用法を明確に指示することが望ましい。2)長期にわたって服用を継続する必要があるので、自己中断の防止や服用に伴う副作用のチェックなど経過観察が必要である。副腎不全(原発性、二次性)患者には、意識不明時の連絡先、グルココルチコイド注射の必要性、主治医の連絡先を書いたカ-ドを持たせるのが望ましい。
2024年3月24日 | カテゴリー:新着情報, 膠原病, 内分泌疾患・ホルモン異常 |