- 現在流行している新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)変異株は、第24報時点と同様に、B.1.1.529系統とその亜系統(オミクロン)が支配的な状況が世界的に継続している。2022年12月30日~2023年1月30日に、世界各地でゲノム解析され GISAID データベースに登録されたウイルスの99.9%をオミクロンが占め、その他の系統はほとんど検出されていない(WHO, 2023a)。オミクロンの中では多くの亜系統が派生しているが、2023年第2週(1月9日~15日)では、BA.5系統が65.7%、BA.2系統が14.6%、 BA.4系統が0.3% (いずれも亜系統を含む)と、引き続き世界的にBA.5系統が流行の主流となっている(WHO, 2023a)。検出された亜系統のうち上位3位は、BQ.1.1系統(28.2%)、BQ.1系統(14.1%)、XBB.1.5系統(11.5%)であった(WHO, 2023a)。日本国内でも2022年7月頃にBA.2系統からBA.5系統に置き換わりが進み、BA.5系統が主流となったが、10月以降はBQ.1系統及びBA.2.75系統の占める割合が上昇傾向にある。また、国内外でオミクロンの亜系統間のさまざまな組換え体が報告されている。世界保健機関(WHO)は、これらのB.1.1.529系統とその亜系統および組換え体を全て含めて「オミクロン」と総称し、2023年1月13日以降は、そのうち、BF.7系統、BQ.1系統、BA.2.75系統、XBB系統を「監視下のオミクロンの亜系統(Omicron subvariants under monitoring)」としている。
- BQ.1系統、XBB系統をはじめとした、特徴的なスパイクタンパク質の変異が見られ、ワクチン接種や感染免疫による中和抗体からの免疫逃避や、感染者数増加の優位性が示唆される亜系統が複数報告されている。 特に北米で増加しているXBB.1.5系統のように、いくつかの地域で既存の流行株に比して感染者数増加の優位性が見られる亜系統も報告されている。しかし、特定の変異株が世界的に優勢となる兆候は見られない。
- 現時点では、オミクロンと総称される系統の中で、主に免疫逃避に寄与する形質を持つがその他の形質は大きく変化していない変異株が生じていると考えられる。世界の人口の免疫獲得状況や、介入施策が多様になる中で、変異株の形質が流行動態に直接寄与する割合は低下していると考えられる。変異株の発生動向や病原性・毒力(virulence)、感染・伝播性、ワクチン・医薬品への抵抗性、臨床像等の形質の変化を継続して監視し、迅速にリスクと性質を評価し、それらに応じた介入施策が検討される必要がある。
- 2022年11月以降、中国で急速な感染拡大が報告されている。中国ではゼロコロナ政策が施行されていたが、12月7日以降感染対策を緩和しており、12月下旬をピークに全国的な感染者数の増加と、1月上旬をピークに重症者数、入院者数の増加が見られたが、現在は減少に転じている。中国からGISAIDに登録されたゲノム解析結果では、BA.5.2系統、BF.7系統が主流となっていると考えられ、いずれも日本国内でも検出されている系統であった。日本では12月30日より中国(香港・マカオを除く)に渡航歴(7日以内)のある全ての入国者と、中国(香港・マカオを除く)からの直行便での入国者については全員に入国時検査を実施しており、主にBA.5.2系統、BF.7系統が検出されている。1月下旬の春節及びその前後における中国国内外への旅行者の増加、中国政府が自国民の海外旅行を解禁するなどの影響から、引き続き中国での状況を注視する必要がある。
2025年1月3日
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カテゴリー:新着情報, 感染症 |