構造生命科学/構造生物学とは
構造生物学とは、タンパク質を中心にした生体高分子の分子機能(はたらき)を、その分子構造(かたち)から理解していこうとする研究分野です。タンパク質は、生理現象に直接関わり、生命の担い手の中心です。20種類のアミノ酸を基本ユニットとして、それらがペプチド結合によって鎖状につながってタンパク質は出来上がっています。つながるアミノ酸の種類・順序はすべてゲノム上に遺伝情報として書き込まれています。
すなわち、タンパク質は遺伝子を設計図として出来上がった生体ナノマシーンと表現できます。しかし、現実には設計図すなわち遺伝情報のみを読み解いても、タンパク質の働きを理解する事はできません。それは、タンパク質は一次元的な鎖としてではなく、三次元的に組み上がった立体構造をとって始めてその機能を発揮するからです。そのため、立体構造情報に立脚した構造生物学は21世紀の生命科学の大きな潮流のひとつになっています。
- 分子機能の理解: タンパク質などの生体高分子の分子機能を、その分子構造から理解する。
- 研究技術: X線結晶学、NMR、クライオ電子顕微鏡などの技術を使用。
- 応用分野: 学術的な側面だけでなく、ゲノム創薬やテーラーメイド医療などの応用が期待されている。得られた構造情報は、データベースとして蓄積されていきます。
個々のタンパク質の性質を調べることはもちろん、異なるタンパク質の間での比較や、さまざまな応用研究に利用されます。
また、データの増大により、類似性の高いアミノ酸配列を持ったタンパク質でおおよその構造を推測することができ、将来は蓄積された立体構造情報とモデルを作るソフトウェアの開発・改良と、更なるコンピュータの発達により現存する個々のタンパク質を実験で解析しなくても 精度のよいモデルが得られることが期待できます。
フラグメント創薬(FBDD)のためのNMR相互作用解析法
核スピンをもつ原子核(1H,13C,15N,19F,31Pなど)を静磁場中に置くと核スピンがいくつかのえんるぎー準位にに分裂する。このエネルギー差に相当する電磁波を照射すると核スピンは共鳴を起こしエネルギーの吸収と放出が起こる。この現象を利用して分子の化学構造や立体構造の情報を取得する方法をNMR法という
溶液NMR法では溶液中で運動する分子をそのまま観測する。
フラグメント創薬では分子量が300以下のフラグメントを用いるためタンパク質との結合が弱い。そのため弱い相互作用の検出に優れた溶液NMRは有力なツールである
2024年5月9日 | カテゴリー:新着情報, 創薬/AUTODOCK |