線種様甲状腺腫について
概念・定義
甲状腺内に結節の多発する疾患であり,腺腫様に増殖を示す部分,過形成を示す部分,およびほとんど正常の部分が混在する.病理所見としては,肉眼的には数個の結節を認めることが多い.結節はしばしば出血,壊死,嚢胞形成,結合織増生,石灰沈着などの二次的変化を伴う.
病因
腺腫様甲状腺腫は過形成であるが,その原因は不明である.
疫学
腺腫様甲状腺腫は発症率がそれほど多くないうえに,正確に診断されていない症例も多数あると思われるので,正確な発症頻度は不明である.
臨床症状
結節状に腫大した甲状腺腫を認める.結節がはっきりしない場合も多い.稀に巨大な甲状腺腫のため気管や食道への圧迫症状を呈することがある.
腺腫様甲状腺腫は腫瘍性疾患ではないので,基本的には外科治療の必要はなく,通常経過観察される.しかし,非常に大きな甲状腺腫,気管や食道の圧迫症状のある場合,機能性結節を生じた場合,および甲状腺癌の合併が疑われる場合は外科的摘除が考慮される
診断方法
A. 臨床所見
- 結節状に腫大した甲状腺腫を触知する。甲状腺腫のみを触知し、結節がはっきりしないことも多い。
- 甲状腺機能亢進ならびに低下症状を認めない。
B. 検査所見
- 甲状腺機能(遊離T4、遊離T3、TSH)は正常である。
- 甲状腺自己抗体(抗TG抗体、抗TPO抗体)は陰性である。
- 甲状腺超音波検査で、多発性の結節であり、結節が被膜で包まれていない、結節内部の構造は多様である、などの所見を呈する。
診断
A.の2項目に加えて、B.のすべてを有するものを腺腫様甲状腺腫と診断する。
管理・予後
定期的な診察,超音波検査および甲状腺機能や甲状腺自己抗体のチェックが重要である.
2024年11月1日 | カテゴリー:甲状腺 |