膠原病における特異抗体の意義
膠原病患者血清中には多彩な自己抗体が検出
される.そのなかには,診断の補助として役立
つ疾患特異自己抗体に加え,臓器障害,予後,
治療反応性と関連することから,病型分類に有
用な抗体もある.
また,一部は抗体価が疾患活
動性を反映し,治療効果判定にも有用である.
膠原病領域の自己抗体研究は日進月歩で,新規
自己抗体の同定,バイオマーカーとしての新た
な臨床的意義が次々と報告されている.ただ
し,一般診療で活用するためには,
保険収載さ
れ,臨床検査として測定できることが前提とな
る.現時点で保険収載されて
いる自己抗体について,取
り上げる.
1.
膠原病診療における自己抗体検査
自己抗体検査には,スクリーニングに用いる
抗核抗体(antinuclear antibody:ANA)と個々
の自己抗体を検出する検査がある.
これらの自己抗体検査を網羅的に測定することは意味がな
く,測定原理を理解したうえで効率的に検査を
進めることが必要である.抗核抗体検査はヒト
培養細胞を用いた間接蛍光抗体法を用いてお
り,有核細胞に普遍的に発現する核,細胞質蛋
白に対する自己抗体を幅広く検出できる.染色
パターンと抗体価に基づいて特異自己抗体の存
在を絞り込み,その存在を個々の自己抗体検査
で確認する.細胞質蛋白に対する自己抗体
は抗核抗体検査で陰性と判定されるため,その
存在を疑う場合は検査室に確認する.
また,
リウマトイド因子(rheumatoid factor:RF),抗環
状シトルリン化ペプチド(cyclic citrullinated
peptide:CCP) 抗 体, 抗 好 中 球 細 胞 質 抗 体
(anti-neutrophil cytoplasmic antibody:ANCA),
抗カルジオリピン抗体等の抗リン脂質抗体関連
検査は抗核抗体検査で検出できない
1 各種疾患における RF/ACPA の陽性率
疾患 RF 陽性率 抗 CCP抗体陽性率
RA 70~80% 80%
健常人 5% <1%
乾癬性関節炎 5% 8.6%
全身性エリテマトーデス 15~35% 7.8%
Sjögren 症候群 75~95% 5.7%
全身性硬化症 20~30% 6.8%
多発性筋炎/皮膚筋炎 5~10% 0%
クリオグロブリン血症 40~100% 3.5%
B 型慢性肝炎 10~15% 0.6%
変形性関節症 5% 2.2%
痛風及び偽痛風 5% 0%
結核 8% 34.3%
特異的な自己抗体は病初期からかなずしも陽性になるわけではないので
最初の段階で保険収載があるからと言って
すべて保険でできるものではありません
おわりに
自己抗体検査が膠原病診療における有用な
ツールであることは言うまでもない.従来の診
断・病型分類に加え,発症予測や将来起こり得
る臓器障害,予後の予測にも有用な知見が集積
されている.ただし,病因的意義は明確でなく,
臨床検査では時に偽陽性,偽陰性がみられるた
め,自己抗体検査結果のみに頼って診療判断を
することは厳に慎むべきである.あくまで補助
として活用し,病歴や身体所見,他の検査結果
も含めて総合的に判断することが肝要である.
2024年7月16日 | カテゴリー:関節リウマチ リウマチ外来 |