歯肉異常と降圧剤の関係について
歯周病では歯が歯ぐきに埋没するほどの腫れは起きません。では、それほどの症状を引き起こす歯肉増殖とはどのような病気なのでしょうか。
歯肉増殖とは歯ぐきが大きく腫れ上がるのが特徴で、広義においては歯周病の1種とも言えます。歯周病は歯ぐきのなかに膿がたまり腫れを起こしますが、歯肉増殖では歯ぐきのコラーゲン繊維質が増殖し腫れるという特徴があります。歯肉増殖が起こりやすい場所は前歯の歯ぐきで、歯ぐき全体が腫れ上がり、悪化すると歯が埋もれることも。
歯肉増殖はいくつかの原因が考えられます。1つは口腔内が細菌に冒されることで歯ぐきが炎症を起こし腫れ上がります。この場合はプラークを取り除くなど口腔内環境を清潔に保つことで腫れは引いていきます。
もう1つは遺伝によるものです。遺伝による歯肉増殖は極めてまれな症状ですが、主に子どもに見られ、症状がひどい場合はほとんどの歯が歯ぐきに覆われることもあります。また高血圧などのある種の薬物を服用することで歯肉増殖を起こすこともあります。
歯肉増殖は薬の副作用でも起きる病気です。歯肉増殖の原因となる薬にはいくつかあり、薬の服用量が多い人は副作用による歯肉増殖を引き起こすリスクが高いと言われています。
高血圧の治療薬にニフェジピン、アダラート、アムロジピンなどのカルシウム拮抗薬があります。これらの薬は血圧を下げる作用を持ち高血圧のほかに狭心症の治療にも使用されます。
しかし、副作用として歯肉増殖を起こすことがあり、ニフェジピンを服用している人の約20%が歯肉肥大を発症するようです。グレープフルーツなどの柑橘系の果物はカルシウム拮抗薬の消化や吸収を助ける働きがあるので服用する場合は注意が必要です。
てんかんによる痙攣を抑える治療薬にフェニトニンという薬があります。フェニトニンも副作用で歯肉増殖を起こす恐れがあり、長期間飲み続けている人の約50%が歯肉増殖を発症しています。
臓器移植や自己免疫の病気で使われる薬にシクロスポリンという免疫抑制剤があります。この薬は近年ではアトピー性皮膚炎の治療薬として、または点眼薬としても使用されています。シクロスポリンも歯肉増殖の原因になり、服用している人の25~30%が発症しています。なお、シクロスポリンもグレープフルーツやジュースと一緒に摂らないようにしてください。
薬の副作用による歯肉増殖の対策法
薬の副作用が原因となる歯肉増殖は、薬の服用をやめる以外に治療法はありません。主治医と歯科医師の連携のもと対策を行うことが重要です。
対策法1:口腔内環境を改善する
歯肉増殖の対策でまず重要なのは口腔内環境の改善です。歯科医院でプラーク除去やブラッシング指導を受けたうえで、毎日正しく口腔内ケアを行い歯ぐきの状態を改善するのがポイントです。
対策法2:服用している薬を見直す
副作用の原因となる薬の服用を見直すことが必要になることもあります。主治医と相談のうえ、可能であれば薬を変更し経過を観察しましょう。
対策法3:外科的治療
歯肉増殖は、増殖した歯肉を取り除く外科的治療があります。しかし、歯肉増殖の原因が解決されなければ、再び歯肉増殖になることも考えられます。
薬の副作用による歯肉増殖は主治医と歯科医師の連携が不可欠
副作用として歯肉増殖を引き起こす薬は、重大な病気の治療薬ばかりです。
2024年7月5日 | カテゴリー:各種治療学, 基礎知識/物理学、統計学、有機化学、数学、英語, 循環器 |