肺高血圧症について
肺高血圧症は、いわゆる高血圧症とは異なり、心臓から肺に血液を送る血管である“肺動脈”の血液の流れが悪くなることで、肺動脈の血圧が高くなる病気です。肺動脈の血圧が高くなると、心臓に負担がかかり、息切れやだるさ、足のむくみ、失神、喀血といった症状が出るようになります
肺動脈などの肺血管や心臓、肺に何らかの異常が起きると、肺動脈の血液の流れが悪くなり、肺動脈圧が高くなることがあります。平均肺動脈圧が25mmHg以上(近いうちに20mmHgに変更される可能性があります)になると肺高血圧症と診断されます。
肺動脈圧が高くなる原因はさまざまですが、肺小動脈の狭窄や血栓症、左心性疾患などがあげられます。
PAHの原因
PAHの発症原因は大きく4つに分かれます。
① 特発性(原因不明)
検査などで色々と原因を調べてもわからない場合を「特発性」と呼びます。患者さんは比較的若い人が多く、女性に多いという特徴もあります。子どもでも発症することがあります。
② 薬物と毒物に伴うもの
ある種の薬物(例:漢方薬の青薫)や毒物によって引き起こされる場合があります。
③ 遺伝性(遺伝子変異)
PAHの発症には遺伝子が関係することも最近よくわかってきました。
④ 他の疾患に関連するもの
免疫の異常によって起きる膠原病(例:強皮症、全身性エリテマトーデス、混合性結合組織病、シェーグレン症候群など)や肝臓の病気(例:肝硬変、門脈圧亢進症など)、HIV感染症、生まれつきの心臓病である先天性心疾患(例:心房中隔欠損症、心室中隔欠損症、動脈管開存症など)などに合併して発症することがあります。
■第2群:左心性心疾患に伴う肺高血圧症
左心は肺静脈から血液を受け全身に血液を送り出すはたらきをしていますが、この左心のはたらきが悪くなると、結果的に肺動脈の血圧が高くなるため肺高血圧症となることがあります。
■第3群:肺疾患や低酸素血症による肺高血圧症
たばこや膠原病などによる間質性肺炎や慢性呼吸不全、慢性閉塞性肺疾患[chronic obstructive pulmonary(lung)disease:COPD]、肺気腫などの疾患が原因となり発症する肺高血圧症です。これらの疾患では、肺の血管が減少したり、肺での酸素の取り込みが悪くなったりして、血液中の酸素が少なくなることが起こります。血液中の酸素が不足すると肺の血管が収縮し肺動脈圧が高くなり、肺高血圧症となります。
■第4群:慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)
下肢静脈などにできた血栓が血管から剥がれ落ち、血流にのって心臓を通過し、肺動脈を塞ぐことがあります。この血栓が長期間(3ヵ月以上)にわたって肺動脈を詰まらせ、肺動脈の流れを悪くすることで発症するのが、慢性血栓塞栓性肺高血圧症(chronic thromboembolic pulmonary hypertension:CTEPH)です。CTEPHも厚生労働省の指定を受けた指定難病で、患者数は全国で4,000~5,000人ほどとされていますが、診断される患者さんは年々増加しています。CTEPHの原因は不明点も多く、急性肺血栓塞栓症の生存患者の0.1~9.1%が慢性化したとの報告があり、血液の固まりやすさなどが関係すると考えられています。
■第5群:原因不明の複合的要因による肺高血圧症
血液疾患や全身性疾患、代謝性疾患などに伴う肺高血圧症のことです。肺高血圧症を引き起こすメカニズムがはっきりわかっていないか、いくつかの要因が複合しているような場合は第5群に分類されます。
2024年7月1日 | カテゴリー:循環器 |