大腸癌ニブ系分子標的薬
レゴラフェニブ(商品名:スチバーガ®)
レゴラフェニブは腫瘍や血管新生に関わる複数の酵素(プロテインキナーゼ)を阻害するキナーゼ阻害薬(マルチキナーゼ阻害薬とも呼ばれる)です。
具体的には、血管新生に関わるキナーゼであるVEGFR1〜3やTIE2、がん細胞が増殖する上で重要な腫瘍微小環境に関わるキナーゼであるPDGFRβやFGFR、腫瘍の形成に関わるキナーゼであるKIT、RET、RAF-1、BRAFといった多くのキナーゼを阻害する作用により抗腫瘍効果をあらわします。
レゴラフェニブは大腸がんの標準的な治療を行っても病勢が進んでしまった患者に対しての有効性などが確認されています。主に切除不能の進行再発大腸がんに対する三次治療以降の選択肢の一つとなっています。
経口薬(飲み薬)であるため一見すると服用がしやすいイメージもありますが、空腹時や高脂肪食(約945kcalで脂肪含量54.6g)の食後に服用した場合に血液中の薬物濃度などが低下することが確認されています。また飲み合わせに注意が必要な薬(リファンピシンなど)がある他、グレープフルーツジュースやセイヨウオトギリソウ(セント・ジョンズ・ワート)を含む飲食物がレゴラフェニブの血中濃度に影響を及ぼす可能性もあるため、これらの飲食物を控えるなどの注意も必要です。
レゴラフェニブはこれらの事項に注意しつつ、通常「1日1回の服用を3週間継続、その後1週間休薬」を1サイクルとして投与を繰り返していきます。
レゴラフェニブの注意すべき副作用の一つが手足症候群などの皮膚障害です。特に荷重がかかる部位に強く出現する傾向にあり、例えば足へのケアとして投与開始の最初の内は散歩などを控える、あるいは締め付けが強い靴を履くのを避けるなどの対処が考えられます。他にスキンケアとして保湿剤(尿素含有製剤やヘパリン類似物質含有製剤など)により皮膚の保護・乾燥防止をしたり、手足への過剰な刺激を避けたり、日焼けを防いだりすることなどが大切です。
他に肝機能障害、下痢などの消化器症状、高血圧、疲労や倦怠感などにも注意が必要です。
トリフルリジン・チピラシル塩酸塩配合剤(商品名:ロンサーフ®)
トリフルリジンとチピラシル塩酸塩の2種類の薬剤による化学療法です。トリフルリジン・チピラシル塩酸塩の開発コードからTAS-102療法と呼ばれることもあります。
トリフルリジンはDNAの合成に必要な酵素(チミジル酸合成酵素)の働きを阻害しDNA合成を阻害することで抗腫瘍効果をあらわす薬です。チピラシルはトリフルリジンを分解する酵素(チミジンホスホリラーゼ)を阻害することで、トリフルリジンの働きを補助する効果を現します。
現在、日本における効能・効果は「治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸がん」となっていて、主に切除不能の進行再発大腸がんにおける三次治療以降の選択肢の一つとされています。また海外(米国)では「フルオロピリミジン(フルオロウラシルなど)、オキサリプラチン、イリノテカンによる治療やベバシズマブなどの抗VEGF抗体療法、セツキシマブなどの抗EGFR抗体療法による治療歴があり、遠隔転移を有する大腸がん」に対して承認されている薬です。
本剤による治療で注意すべき副作用は骨髄抑制、感染症、間質性肺炎などです。
また本剤の服薬スケジュールは個々の患者の体表面積に合わせた投与量を通常「1日2回(朝・夕食後)、5日間服用し、2日間休薬。これを2回繰り返したら、その後14日間休薬」とし、これを1サイクルとして繰り返していく…という比較的複雑なスケジュールによって行われます。適切な治療を行うため、処方医や薬剤師から服薬方法などをしっかりと聞いて確認しておくことも大切です。
2024年9月20日 | カテゴリー:AUTODOCK VINA , 各種治療学, 各種病因学, 癌の病態生理と治療学 |