HIF-PH阻害薬によるがん微小環境と腫瘍免疫への影響の文献
抄録
HIF-PH阻害薬が本邦で承認され保険適応され,臨床で複数の薬剤が使用されており,本邦でも多くの臨床研究や症例報告がなされてきている.臨床使用に関する多くの情報が蓄積されている.しかしながら,HIF-PH阻害薬は低酸素誘導因子(HIF)のレベルを亢進させる作用機序のため,がん患者への投与には注意が必要な状況である.がん細胞において,HIFは腫瘍増殖に影響を与え,化学療法および放射線抵抗性に関与している.一方,免疫細胞においてHIFの亢進は炎症と関連しており,腫瘍進展の抑制に関与しているとされる.これら組織への影響として相反する作用は,生体モデルにおいては明らかとなっていない.そのため,生体腫瘍においてHIFの亢進が,がん治療において有益であるかどうかを明らかにすることが課題である.我々はこれまでに,担がんマウスモデルにおいてHIF-PH阻害薬の投与が腫瘍血管の正常様化を促進し,腫瘍増殖の抑制につながることを報告した.さらに,これらの現象は腫瘍浸潤マクロファージの誘導を惹起し,腫瘍内マクロファージの表現型の変化も誘導した.
著者情報
- 松永 慎司
大阪公立大学大学院 医学研究科 分子病態薬理学
- 冨田 修平
大阪公立大学大学院 医学研究科 分子病態薬理学
2024年9月25日 | カテゴリー:各種病因学, 癌の病態生理と治療学 |