尿路結石について
尿路結石(にょうろけっせき、kidney stone disease, urolithiasis, urinary calculi)は、尿路系に沈着する結晶の石である結石のこと。
もしくは、その石が詰まることにより起きる症状のこと。しばしば激痛を伴う。
要因は明確にはなっていないが、発症は動脈硬化と類似し、メタボリックシンドロームの病態の一つだと考えられ、予防法に共通点も多い。
体外衝撃波結石破砕術(ESWL=Extracorporeal Shock Wave Lithotripsy[2])の登場により尿路結石の治療は変化し、患者の負担は少なくなった。
しかし再発予防は重要で、水分を多く摂る・肥満防止・食生活改善が予防の基本である[1]。
脂肪・動物性たんぱく質・茶・紅茶・酒(特にビール)を減らし、ホウレンソウなどシュウ酸の豊富な野菜に気を付け、
カルシウムは多すぎも少なすぎもせず摂取することである。>>一日のCa摂取量は1000mgが適量
部位による分類
- 上部尿路結石
- 腎結石 (Kidney stone)
- 尿管結石 (Ureteric stone)
- 下部尿路結石
- 膀胱結石 (Bladder stone)
- 尿道結石 (Urethra stone)
成分による分類
尿路結石成分の発見率
尿路結石成分 発見率 シュウ酸カルシウムとリン酸カルシウムの混合 44.3% リン酸カルシウム 16.8% シュウ酸カルシウム1水塩 12.2% 尿酸 7.6% シュウ酸カルシウム1水塩と2水塩の混合 6.9% シュウ酸カルシウム2水塩 6.1% リン酸マグネシウムアンモニウム 3.8% シスチン 2.3%
腎臓結石と尿管結石を「上部尿路結石」、膀胱結石と前立腺結石を「下部尿路結石」といい、日本人の場合上部尿路結石が96%を占める。
日本人の生涯罹患率は15%程度である。男性の好発期は50歳代、女性は閉経後に多く発症し、60歳代が多い。 また、7~9月に疝痛発作が増加する[7][8][4]。
しばしば激痛の発作を伴い、結石の疝痛は「痛みの王様(king of pain)」「結石の痛みはお産の次に痛い」[4]と言われるくらいに激烈である。
腰周辺やわき腹、背中側あたりに感じられ、倒れこんだり、まれに失神する患者がいるほどの痛みである。
しかし尿管結石の約3割は、痛みを伴わない[9]。大きな結石ほど痛みが強いと思われがちであるが、小さな結石の方が突然に強い痛みが出る。
目で見てわかるほどの血尿が出る場合もあるが、血尿は出ないことの方が多い[4]。
結石は多くの人でしばしばできているものではあるが、できた結石の大きさが尿管よりも小さい場合は、自然に尿管内を移動して排尿とともに排出され、痛みも発生せず、本人は何ら問題を感じていない。
しかし、結石の大きさが尿管と同等もしくはそれより大きい場合、尿管を塞いでしまい、腎臓で尿が作られるにつれ、腎臓から結石の位置までの圧力が高まってゆき激痛が発生する。この状態でCT撮影を行うと、腎臓の肥大が起きている。
2013年の尿路結石の診療ガイドラインは、尿路結石の再発予防の基本を、以下の3点としている[1]。
- 水分を多く摂る。尿量が増加し結石の成分を問わず効果がある。
- 肥満防止
- 食生活改善
水の飲用では、2,000ミリリットル(2リットル)以上で結石が形成されにくくなるとの報告がある[21]。
プリン体を含む酒、特にビールを控えることが重要である[1]。茶、紅茶もシュウ酸を含むが、緑茶の中でも「ほうじ茶」は最も少量である[22]。
脂肪の過剰摂取は避ける。本来シュウ酸と結合すべきだったカルシウムが脂肪酸と結合し、結果的にシュウ酸の吸収が増加すると考えられるためである[22]。
野菜はゆでることが重要である。特にほうれん草は3分間ゆでるとシュウ酸の除去量は37~51%になることが報告されている[22]。
クエン酸は、尿をアルカリ性へ傾け、結石を溶けやすくさせるが、クエン酸を多く含む野菜や果物を増やすことは、同時に結石形成を促進するシュウ酸の摂取過剰となってしまう可能性がある[23]。
カルシウムを適度に摂取する(サプリメントでも用法・容量を守り、決して過剰摂取しない)。シュウ酸と結合することで、腸内でのシュウ酸吸収を減らす効果がある[22]。
ビタミンCはカルシウムと結合するため、その遊離型は少なくなる傾向がある。これは、カルシウムが、シュウ酸カルシウム(結石)として分離する可能性が少なくなるということである。また、ビタミンCの利尿作用により、シュウ酸塩の尿中濃度が低くなる。このように、ビタミンCはシュウ酸塩を増やすが、カルシウムとシュウ酸塩の結合を阻止するのである。ビタミンCも代謝産物はシュウ酸であり、月余に渡る過剰摂取は、結石のリスクを高めると一般に言われているが、ガリー・カーハン博士らの論文ではビタミンCの低摂取/高摂取による結石リスクの有意差は見られなかったこともあり、現在では間違いとされる[24][25]。
炭水化物は穀物を主として摂取し、尿中に排泄されるカルシウムの量を減らすため砂糖の過剰摂取は控える[23]。
高インスリン血症(インスリン抵抗性)は、腎尿細管におけるアンモニア産生を抑制し、尿pHを低下させる。結果、尿酸結石が形成されやすくなるので注意が必要である[26]。
結石の成長を阻害する薬の研究が行われている[27]。
2024年8月14日 | カテゴリー:泌尿器科的疾患 |