波動方程式
粒子の運動に伴う ド・ブローイ波 を 表す関数(波動関数 と呼びます)を Ψ(x , t ) としましょう. シュレーディンガーは 粒子性の関係式 (1) を 考慮しながら, 波動関数 Ψ(x , t ) の 満たすべき 波動方程式
を提案しました. ただし, プランク定数 h の代わりに それを 2π で割り算した
が使われています. (アルファベットの h に 横棒が付いているので, エッチ・バーと発音します.) 今後もしばしば お目にかかります.
波動方程式 (3) が 自由粒子 に対する シュレーディンガー 方程式 です
「自由粒子の波動関数」 シュレーディンガー方程式 (3) の最も簡単な解は です. これが 自由粒子の波動関数 です.このように シュレーディンガー方程式 の解 すなわち 波動関数 は一般に複素数 となります. これはなんだか変ですね. もともと波動関数は ド・ブローイ波を 表すものと考えました. |
「3次元空間における シュレーディンガー方程式」 現実的な問題に対しては (7) 式の シュレーディンガー方程式を 3次元空間に 拡張しなければなりません. この場合の力のポテンシャルは 座標 ( x, y, z ) の 関数であり, 波動関数は 変数 ( x, y, z, t ) の関数となります.そして シュレーディンガー方程式は と書かれます. |
「波動関数の確率解釈」 下図 のように 3次元空間の中で,座標 (x , y , z ) の点の近傍の3辺の長さが dx , dy , dz の 微小体積 (直方体) dV = dx dy dz を考えます. 時刻 t において, この微小体積の中に 粒子が見出される確率 すなわち 粒子の "存在確率" を P (x , y , z , t ) dx dy dz としましょう. P (x , y , z , t ) は 点 (x , y , z ) の近傍の単位体積あたりの 確率ですから, しばしば確率密度 と呼ばれます. |
[注意] 上で 粒子の "存在確率" という言葉を用いました. しかし,これは,例えば電子が 常に 粒子 の形で, 粒子 の姿をして存在し, ただその運動が 確率的である, ということを 意味するものでは ありません. 電子はあくまで 「粒子」 と 「波動」 の 両方の性質をもった 存在であり, 「粒子」だけの性質 を持つわけでは ありません. ここで言う "存在確率" とは, 「粒子」を観測したとき 見出される確率 を意味します. 誤解を避けるため "引用符" で 囲んでおきます. |
ボルンの確率解釈は, 「粒子の "存在確率"の 確率密度は 波動関数の 絶対値の2乗に等しい」 と主張しています. すなわち,上図 の 微小体積 dV 内に粒子が見出される確率は であると考えます. 波動関数 Ψ(x , y , z , t ) そのものは 一般には 複素数の値ですが, その絶対値の2乗を とりますから, "存在確率"は常に 正 (または 0) となって,困ることは 起きません. |
「波動関数の規格化」 |
任意の時刻 t において, 粒子は空間のどこかに 存在するはずですから, (1) 式の 粒子の "存在確率"を 全空間にわたって 積分すると, すなわち全確率を 計算すると, 100% になるはずです. つまり 波動関数 Ψ(x , y , z , t ) は 規格化の条件 を満たすように なっていなければ なりません.単に シュレーディンガー方程式 の解を求めただけでは 規格化の条件 (2) を 満たしているとは 限りません. シュレーディンガー方程式の ある1つの解 Φ(x , y , z , t ) に,0 でない 任意の定数 C を 掛け算した Ψ = C Φ も 同じ シュレーディンガー方程式の 解ですから, この定数 C を うまく調整すれば, 結果の波動関数 Ψ が (2) 式を満たすようにすることが できます. この操作を 波動関数の規格化 と呼び,掛けるべき 定数 C を 規格化定数 と呼びます. 規格化定数が と書かれることは 容易にわかります. |
2024年8月15日 | カテゴリー:基礎知識/物理学、統計学、有機化学、数学、英語 |